◆亡き人を想い、蜜柑の木で作った御箸、現世と天国をつなぐ【架け橋(箸)】となることを願って

少し前、春頃の話になりますが、お客様から切り抜いた読売新聞の新聞記事を送っていただきました。

同封されていた手紙には、「きっと(京都おはし工房さん)の仕事だと思いますが」という文章と、【亡き息子 みかんの木・箸に】と書かれた新聞記事が同封されていました。確かに、この記事に乗っている御箸は当店で製作した物です。

2年ほど前に遡りますが、大きな蜜柑の木の切り株を持って来られて、この木材で御箸と写真立てを作ってもらえないかという御依頼でした。当方、箸を作るのは専門ですが写真立て等は専門外ですので、「どこか家具などを制作している木工所などに頼まれてはどうですか」と一度はお断りしたのですが、いろんなところに制作を依頼しても全て断られて困った末に当店に来られたようです。

色々と話を伺っていくうちに、この蜜柑の木材は昔の脱線事故で無くなられた息子さんの思い出が詰まった、大切な形見の木であるという話を聞かせてもらいました。そういう事情なら、無下に断るわけにもいかず、こちらもできる限りのご協力はさせていただきますという話に落ち着き、蜜柑の木材を預からせてもらう事になりました。

その後、1年ほどかけてしっかり乾燥させてから、板材に挽いたところ、切断した断面にはまるで黒柿のような美しい茶褐色の杢がきれいに入っていて、そのまま立てかけておくだけでも十分オブジェとしても飾っておけるレベルの美しい板材が5枚取れました。そのうち特に杢の綺麗な2枚は、「写真立て」と、立てかける「オブジェ」に加工し、残った材から「御箸」と「箸置き」を作らせてもらいました。

そして、この春にようやく「写真立て」「御箸」「箸置き」「オブジェ」が完成し、納品させていただきました。その際に御両親様とは直接お会いできなかったのですが、届けていただいたクライアント様からの話では「たいそう喜んでいただけました」との御報告をいただき、安堵した次第です。

それから暫くして今回、他のお客様から新聞記事を届けていただいた話に戻りますが、記事の写真を見せてもらって、御両親が喜んでおられる姿をしっかりと拝見できて本当にうれしく思います。現世におられる御両親と天国におられる息子さん、住んでいる世界が違うため直接お会いする事は出来なくても、せめてかけがえのないお食事の時だけは、次元を超えて共に同じ時間を共有できる架け橋として、この蜜柑の御箸が現世と天国とをつなぐ架け箸となってくれることを切に願います。

今回素晴らしい仕事を御依頼いただいたクライアント様と、新聞記事を送っていただいたお客様に深く深く感謝致します。

お持ち込み材「思い出架け箸」の作品例に新しく【桜の木箸】追加 

◆今回は大阪のお客様からの御依頼で、永年庭に生えていた桜の木から記念品となる御箸を作って欲しいという御依頼でした。

くわしくお話を聞くと、御依頼主様が幼少の頃、ご両親が庭に桜の木を植えられたそうです。
その木はさくらんぼができる種類だったようで、毎年さくらんぼの実が出来るのを楽しみにされていたそうです。永い歳月にわたり御家族を見守り続け、様々な恩恵を与えてくれた桜の木ですが、どうしても切らなくてはならない事情ができ、そのまま処分してしまうのはあまりに忍びないという思いから私共の方に御相談に来られました。

丸太のままで持ってこられたので、「切ってみて乾燥させてみないと、きちんとした御箸に仕上がるか分かりません」とご返事し、しばらくの間材料を預からせていただきました。

そして本日、ようやく出来上がった御箸をお渡しすることが出来ました。見ていただいて最初の一言が「うわ、きれい」と言っていただけたのが印象的で本当にうれしかったです。ちょうど今日がご両親の誕生日だそうで、「これからすぐに渡しに行ってきます。」と大変喜んでいただけました。

全部で17膳分の御箸を作らせていただいて、夫婦箸以外の残りは年末と年始に集まる親戚の方に配られるそうです。この御箸が桜の木に縁ある皆様にとって、記念に残る特別なお年玉になる事を願っています。

 

 

『思い出架け箸』の作品例に新しく【欅の古材箸】を追加しました。

紙箱に入れ、【男性用】【女性用】で包装紙の色を変えて、きれいに包装。
本漆を用いた【拭き漆仕上げ】で、欅の美しい木目が奇麗に浮かび上がります。

◆今回、静岡県のお寺のご住職から、「お寺の改修工事の際に出てきた欅の古材から御箸を作ってもらえないか」という御相談をうけました。

 お話を聞くと30年ほど前から置いてあった欅の古い板材が数枚あり、これを使ってお寺の改修工事に関わった方々への御礼の品として御箸を作って渡したいという御依頼でした。

 欅は木目の美しい木材で、大きな木目と木目の間に、細かい波状の木目『綾目模様』が入るのが特徴です。これをきれいに表現するには漆仕上げが最適で、今回は本漆を用いた『拭き漆仕上げ』で、男性用と女性用の計17膳を作りました。

 納品後、お礼のご連絡をいただき、「渡した方がもったいなくて使えないとおっしゃっています。」という喜びの声を聴かせてもらいました。『欅の古材』に縁ある方々に喜んでいただけたのは、本当にうれしく思います。職人冥利に尽きる、ありがたい御依頼でした。

 

『星野リゾート 界 熱海』様から【思い出架け箸】の制作依頼を受けました。

『松の古木箸』1膳1膳、木目の表情が違うところが天然木の魅力です。
【一番上が御箸になる前の原材料です。】

◆今回、『星野リゾート 界 熱海』様から【思い出架け箸】の制作依頼を受けました。

1894年(江戸時代)から続く老舗旅館をリニューアルされる事になり、その歴史と伝統を長年に渡り支えてきた建物の一部【松の古木】から、世界で唯一の御箸を誂えて欲しいという御依頼です。

松は一年中、常に緑の葉を付けている事から『常盤木(ときわぎ)』と呼ばれ、生命力あふれる延命長寿の樹とされています。『松竹梅』にも名前が登場し、縁起良く、おめでたい吉祥のシンボルとして知られ、材は針葉樹の中では堅牢で、水気に強いことから建物の梁などに利用されます。

美しい木目の部分を厳選し、1膳1膳手削りで削り出します。更に美しい木目が際立つよう本うるしを使った「拭き漆仕上げ」を施しました。

長い歴史を見守ってきた【松の古木】に、御箸としての新たな命を吹き込み、『星野リゾート 界 熱海』と皆様とを繋ぐ【縁の架け箸】となれば幸いです。

 

お寺の歴史を見守ってきた楓(かえで)の大木から作った『御箸』と『箸置き』

美しい杢の浮かんだ『楓(かえで)の 銘木箸』

『思い出架け箸(お持ち込み材)』のページの【作品例】追加です。

今回の御依頼は、近くの妙心寺にある古いお寺のご住職からの御依頼でした。

「本堂の移築で、庭にある楓の古木をどうしても切らないといけなくなってしまったので、御箸という形で上手く有効活用できないか」という ご相談でした。

更に話を聞くと、「永い歳月お寺と共に歩んできた思い入れのある古木なので、御箸という形で新たな命を吹き込んで檀家の皆様にお配りしたい」という御意向でしたので、『御箸』と『箸置き』をセットで作り、『お寺の楓の古木で作りましたという説明書きを添えて』桐箱に入れ、のし紙を巻いて包装し、200組ほど納品させていただきました。

後日、檀家の皆様も非常に喜んでいたという御報告を、ご住職から聞かせていただきました。
こちらこそ本当にありがとうございました。

最後に、今回の主役である楓の古木がいてくれた事で、多くの方々に『思い出の橋渡し』をすることができました。永い歳月を生き抜いた立派な楓の古木に深く深く感謝です。

お持ち込み材「思い出架け箸」の作品例に『癒蒼木箸』追加

癒蒼木 (ゆそうぼく)八角箸【箸置き付】

癒蒼木(ゆそうぼく)あまり聞きなれないこの木材は、世界で最も重たい木材として、古くは「ボーリングのボール」を作るのに使われたという記録があります。癒蒼木という漢字は、この木材の樹液が様々な病を癒す効果を持つ事と、時間の経過と共に蒼い緑色に変化する特徴から名付けられました。

更に、この木材は樹脂分を多く含み、船舶スクリューの軸受けとして重宝され、長年油をささなくてもそのまま使用できたと伝えられています。

今回の「思い出架け箸」は15年近く前になりますが、小豆島のお客様でした。定年までずっと捕鯨船に乗っていたお父様が、捕鯨船の船舶スクリューの軸受けに使われていた癒蒼木を記念に持っておられたそうです。

その癒蒼木の軸受けから、還暦の御祝用に御箸と箸置きを作って欲しいというご依頼でした。

確かその時は20膳程の御箸が作れて、親戚の方々に配られたそうです。
後日、みんな大変喜んでいたという内容の御礼の手紙と、小豆島の干しシイタケまで送っていただき、今まで食べた中で一番おいしいシイタケだったのを今でもよく覚えています。

商品代はきちんといただいたのに、御礼状やシイタケまで送っていただいた御厚意に深く感謝すると共に、私達にまで思い出の架け箸を広げていただいた御厚情は今でも大切な記憶として残っています。

お持ち込み材「思い出架け箸」の作品例に『本煤竹・夫婦箸』追加

煤竹夫婦箸【箸置き付】
結婚式の記念品に両家の「父母」「祖父母」の皆様にプレゼントされました。

消えゆく稀少材『本煤竹』から誂えた「夫婦箸」と「箸置き」

こちらは結婚式の記念品として、両家の「ご両親」と「祖父母」の皆様に手渡しする御箸を作って欲しいというご依頼を受けました。

使ってほしいと持ち込まれた材料は、お婆さまのご実家が藁葺屋根の古民家だったらしく、そこで使用していたきれいな煤竹があるので、ぜひそれを使って夫婦箸を誂えてもらえませんかというお話でした。

渡された煤竹を見てみると厚みもしっかりしていて、十分に御箸が出来るサイズでしたので、夫婦箸と一緒に箸置きも作らせていただきました。

出来上がった御箸を新郎・新婦に手渡した時、お二人が「御箸なら毎日使ってもらえて、毎日私たちのことを思い出してもらえたらうれしいね」と話されていたのが今でも印象に残っています。

御箸とは人の心や思いが詰まった大切な食器だと、改めて心に刻めた、感慨深いご依頼でした。

お持ち込み材『思い出架け箸』のページを追加しました。

先日、お約束していた『思い出架け箸』のページを追加しました。

『思い出架け箸』とは、「お持ち込みいただいた材料から記念に残る、世界で唯一の御箸を誂えますよ」という企画です。

お持ち込みいただく素材には、その材にゆかりある人達の大切な思い出や、懐かしい記憶がいっぱい詰まっているのではないでしょうか。

そんな思い出が詰まった素材から、一人ひとり専用の御箸をお誂えし、過去の懐かしい思い出と
今とをつなぐ架け橋(箸)となる1膳を制作したいと思っています。

 

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